
美術大学と専門学校。どちらに進学しようか迷っている人も多いはず。そもそもこの記事を見てくれている人のほとんどは、美大受験を受けようか迷っている段階の人たちだと思います。
近頃は、デザインの専門学校に進学する人も増えてきて美術大学と専門学校の違いをはっきりと理解した上で選択してほしいです。
そこで今回紹介するのが、美大と専門学校(=デザイン)の違いです。

- 美大・専門学校の特徴
- メリット/デメリット
それぞれ公正な立場で解説していきます。
目次
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美術大学の特徴
大学は基本的に四年制大学と短期大学に分かれます。私立・市立・国公立・公立とほかの大学同様に区分されており、四年制大学はその名の通り、4年間の修業を経て就職・大学院などに進学しますよね。
私立の美術大学で有名な大学が5つあり一般的に「東京五美大」と言います。短期大学は多くは3年ほどの修業を経てから、就職・又は大学へと進学するのが一般的です。
美術系の場合はまた少し種類が増えます。芸術大学や芸術短期大学などもあり、美術系の他に音楽など芸術を専修するための機関ですね。もちろん受験の内容も一般的な大学とは異なります。
美術大学のメリット
就職に有利
やはり美術大学出身だと就職に有利という理由は外せませんね。昔よりは弱まってきましたが、やはり「大学卒」という肩書きは大きいといえます。
実力・人間性はこの肩書きだけではわかりませんが、まだ肩書きの印象は強いです。ちなみに、進学する大学によっては大きく差別されるのも事実です。
日本のビジネス業界の悪い点とも言えますね。
様々なジャンルの人と交流ができる
例えば建築家志望であったり、デザイナー志望・ファインアート系まで様々です。『自分とは異なる分野の人と交流する必要なんてない』という考えもわかります。
ですが、自分とは異なるジャンルの人同士が互いの視点から意見を交換しあえるのは、そうないことですよ。もし起業をして事務所を構えようとするとします。その時にインテリアデザイナーの友達がいたら便利ですよね。
いささか自分本位的な考えですが、何かしらの交流関係は広い方が得なのは確かです。
メリット3. 自分で授業が選択できる
美術大学というよりも大学のメリットですね。
自分にとって必要な科目を選択できます。前提条件として、自分の将来に大まかなビジョンがあることを必要とします。地元の大学とは違って美術大学ですから、生半可な気持ちで入学する人は少ないと思いますが、自分の長所・短所を始め将来必要とする知識・技能の向上のために大学でどのように取捨選択するかを、少なくとも理解しておくことが必要でしょう。
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メリット4. 設備・土地が豊富
上の画像は多摩美術大学の図書館です。
日本を代表する建築士の一人である伊藤 豊雄さん設計の『八王子図書館』です。(ちなみに建築士も広義ではデザイナーとも言う。)
モスクのアーチ型を連想させる外観だけでなく、その形は内部にまで広がっています。土曜日には一般開放されています。気になる方は行ってみるといいですね。
このように、私立の大学を始め大学は土地・設備が豊富なのもメリットの一つです。専門学校はあまり土地が豊富なところは少ないと思います。設備は教育に支障が出るコンピュータ機器は最新な物が多いです。
メリット5. 自由度が高い
上の画像は武蔵野美術大学の図書館です。
こちらは、日本建築大賞・JIA新人賞など多数受賞された建築家の藤本壮介さん設計の「武蔵野美術大学図書館」です。ちなみにこちらは一般開放されていませんので、いってみたい方はムサビにご入学ください。
自由度が高いのも美大のメリットの一つです。例えば自分が選択したコマが午後からの日があれば、午前は自由なわけです。専門学校は今までの高校同様、時間割が決まった形式がほとんどだと思います。
メリット6. 社会的認知度が高い
バイトで美術・装飾担当など任せられたりします。自分の描くイラストや装飾で、バイト先を自分好みの雰囲気にできたりして楽しいかもしれませんね。
先述しましたが、社会的認知度が高いと就職に好影響を及ぼします。しかしこちらも先述したように大学によっても格差がどうしても存在します。
メリット7. 美術の教員免許が取れる
美術大学では美術教師の教員免許も取得することが可能です。在学中に教育免許法で定められている授業・教職に関する授業・大学ごとに異なる美術の授業の3種類を履修し、単位を取得することが必要です。
もしも就職先が見つからなかったり、仕事先がなくなったりした場合には地元の美術教師になるのも一つの手かもしれませんね 。
メリット8. サークル活動がある
美術大学と専門学校の大きな相違点としてサークル活動が豊富か否かも一つと言えます。専門学校にも(部活/サークル)はありますが、大学よりかは数が少ないはずです。
サークル活動が盛んな上に設備が充実しているところが多いのでのびのびと生活できます。
美術大学のデメリット
デメリット1. 教授と生徒の距離が遠い
これは知り合いの経験談が元になったのですが、教授と生徒には一定の距離があるそうです。まず美術大学は塾のように、付きっきりで自分の向上を見届けてくれる人は少ないとのことです。
課題を与えてそれを生徒は考え、表現する。そして教授が評価をする。学科にもよりますがこういう形が当たり前のようです。
デメリット2. やる気のない人はほったらかし

美術大学は、生徒と教授の距離があるためやる気がない人はそのままほったらかしです。前提として『なぜ入ったんだ』 ってなりますしね。
自分のことは自分くらいが面倒見なければいけません。
デメリット3. 奨学金の返済が高い
私立の大学となると奨学金を借りる場合がほとんどかと思います。奨学金はいわゆる『学生用借金』なので卒業後から返済しなければなりません。大学を卒業したのに放浪していては自己破産になる可能性が大きくなってしまいます。
大学に入って何を学ぶかもしっかりと把握しておかなければいけませんね。ちなみに私に美術を教えてくださった先生はもう50後半になるのにいまだに奨学金を返しています。
デメリット4. 奨学金を借りたのに中退したらヤバイ
これは大学だけに限りませんが注意です。中退した場合も奨学金は払い始めなければなりません。払えない場合には保護者負担になります。
もしそうなった場合にはもう取り返しのつかないですね。責任感を持って将来に行動することも大切ですよ。
デメリット5. 留年のリスクが高い
自分でコマ割りを選択できるということは、自由な分浪人の可能性もあるということを自覚しなければなりません。大学にかかわらず、一定数の単位を取得しなければ留年になります。
遊んでばかりは本末転倒です。
デメリット6. 美術教諭は給料が安い
美術の教員は公務員なので比較的給料が安いです。人に教育をすることは給料に関係ないかもしれません。
ですがもっとお金を儲けたいという人は、美術教員を志望するのは視野が狭いと思います。ですが仕事がなくて困るといった自体に陥らないために、教員免許を取得しておくことは悪くない選択とも言えます。
デメリット7. 画材費がかかる
画材費がとにかく高いです。絵画の学科になると画材費が他の科よりもずば抜けて費用がかかることは間違いないでしょう。
ですが学費の中にこれらが入っているケースと、そうでないケースもあるのでなんとも言えませんが、とにかく画材にはお金がかかります。
2. デザインの専門学校の特徴

専門学校は基本的に2年~3年が多いです。主な種類として、デザイン系・イラスト系・映像制作系の専門学校など様々で授業内容は専門的な学習がほとんどを占めます。
大学と違って授業時間があらかじめ設定されているので、今までの学校と同じ時間割で頭脳労働重視というのが多いと思います。
デザインの専門学校のメリット
メリット1. 専門分野が学べる

専門学校の大きなメリットの一つとして挙げられるのが、社会に出てすぐに役立つ専門分野が学べるところだと思います。美術系というのは、感性を大事にする=適当というイメージを持たれるかもしれませんが、実際はそうではありません。
第一線で活躍する人たちは感性も優れていると同時に頭脳も優れています。優れたデザイナーは経済・文学的に今の時代を見極め次に来る時代に備えて活動しています。
そういった専門的な分野において、頭脳的な訓練を受けられるところが専門学校の大きな魅力の一つとも言えるのではないでしょうか。そもそも、僕がデザインの専門学校に通い始めて感じたことは、センスは経験と感動から養われることです。
友人の作品を見て感化されたり、展覧会やコンペで一喜一憂したりすることで、自分の中のデザイン性というものは少しずつ蓄えられている。そういうふうに実感しています。
メリット2. 大学と比べて比較的入りやすい
これは言い過ぎかもしれませんが実際事実です。専門学校によってはお金だけ払えば入学を歓迎するところもあります。専門学校の求人広告が多いのはもうおわかりいただけたと思います。
これはメリット・デメリットどちらでもないと僕は考えます。ですが一応メリットのところに入れておきますね。
メリット3. 講師と生徒の距離が近い
講師との距離が近いです。まあでも大学に比べてです。専門学校は頭脳労働が多いと先述しました。
これだけを聞くと実践教育が多い大学の方がいいと思う方もいるかもしれませんが実際は専門学校の方が実践性はあります。デザインはセンスだけではなく人々の利便性に答えることを目的としますので、頭脳的に潮流を見通す能力が必要不可欠ということです。
その流れの中で第一線で活躍されている講師たちが、近距離で教育を施してくれることは、何かしらの刺激を受けることはまずまちがいはないでしょうね。
メリット4. 即戦力を育成
先述した通り、実践性に富んだ教育を中心とするデザイン系専門学校ですので事務所に入った後は即戦力が多いです。そう言った点も専門学校特有のメリットとも言えるでしょう。
メリット5. 同志が多い
やはり生徒と講師の距離が近い分一人一人の授業を受ける質も高いです。講師が現役の方だったりすると、引き抜きのケースもあるのではないでしょうか。
専門分野を2~3年学ぶので即戦力にできるようになります。同じ職業を目指す仲間が多いので同士による切磋琢磨ができるのもメリットですね。
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デザインの専門学校のデメリット
デメリット1. 「専門学校」の肩書きがないと潰れる
学校の名前に“専門学校” がないと突然潰れる可能性があります。
これはまたもや知人の経験談ですが、ある都市部の専門学校なのですが、入学金を払っていざ入学しようとしたら資金不足で専門学校が倒産したという事例があるそうです。
あくまでも他人の経験談なので確証はありませんが、何でもかんでも安心して入学するのは良くないということです。『専門学校』という名前が表記されているのか注意してみてみましょう (又は学校法人)。
デメリット2. 社会的認知度が低い
社会的認知度が低いのも難点です。就職で優先的にみられるのが、出身校を見られる風潮 が未だにあります。
この風潮は日本特有であまり誇るべき点とも言い難いのも事実です。専門学校でも長年の実績により、デザイン業界から厚い信頼を受けているところは多々あります。
そういった例外を除いて、社会的認知度が大学に比べて低いのは事実です。
デメリット3. 土地が狭い
土地が低い分、都市部の有名専門学校は縦長に伸びています。僕が在学しているデザインの専門学校も縦に長いです。
なんと8回まであります。場所が渋谷なので、その分昼飯や休憩がてらに渋谷をぶらぶらしたりしています。『モード学園』とかは高層ビルみたいですよね。
大学と比べて土地の面積がないのがデメリットの一つと言えます。
デメリット4. 向き不向きがある
専門学校なのでそのジャンルごとに専門的に学習します。なので他のジャンルに志望を変更なんてのは、とてももったいないことです。元から将来像がはっきりしていない限りは、そう言ったことも考えられるわけです。
そのため向き/不向きがあると言えます。
デメリット5. 自由がない
専門学校の特徴でも書いたとおり、自由が少ないです。大学とは違って、コマ割りが選択制ではなくてあらかじめ決まっているのが多いです。
その点自由がないのもデメリットの一つとも言い換えられます。
デメリット6. サークル活動が少ない
大学に比べたら(サークル活動・部活)少ないです。その点においては大学よりは満喫できないでしょうね。サークル活動で汗を流したい人で専門学校志望の方は社会人チームに入ることをお勧めします
どちらにしようか迷っている人へ
自分の大切な進路を決めるにあたって『先生が勧めてきたから』 や 『友達が行くから』などの理由は非常にもったいないです。
自分の将来を自分で決めるためにはやはり専門学校や大学・短大のどれにするべきか、そしてその学校は自分に何をもたらしてくれるのかを考えることが必要になります。
それぞれのメリット・デメリットを進路で迷っている人、これから進路を決める人や編入を考えている人に向けてこの記事を書いてきました。この記事が皆さんの参考になれたら嬉しいです。